刹那の連続と

08/13/2012

テーブルのウイスキーの瓶が深い海の色になるころ、からだを闇に沈むにまかせてみた。
ひかりはピアノのように表面を叩くけれど夜は肌を浸す。
弦をひっかく楽器が好きだ、呼吸が管を通る感触のさまざまをいつも考えていて、それはからだの表面のあらゆる大小のうごめきに通じていて、ことばの色にも通じていて、かなしくなるかほっとするかにも響いている。

悲しくなるといえば、バーレッスンのときには珍しく音楽をかけたら、父が、好きな曲があるんだけどインターネットで検索してくれる?と言っていた曲だった、iTunesにあったのにお金がかかるならいいよ、とあきらめてしまった。
たったの150円なのに、そういえば父はどんなに少しのボーナスでも母に持って帰るひとで、母は、内緒で自分の好きなことに使ってもわからないのにね、絶対そういうことできないひとなの。と、笑っていた。会社でおやつの時間に配られるおやつも必ず持って帰ってきてくれた。母や私たちは小さく刻んでそれを食べた。
だから私はうちは貧乏なのだ、と考えていたのだけれど。
たったの150円くらい、でもそんな小さな好きをも優先しない父。
何でかわからないけどこういうことを考えるといつも涙が止まらなくなって、いじらしさと不自由さと、誰かを思ったり思えなかったりすること。
泣きながらバーレッスンするというよくわからんことになった。
ひぐらしが後押しするし。

なんて好きに生きてるんだろう、私は。
もうこのことを貫いて、楽しいよーって巻き込んじゃうしかわたしができる恩返しはないのだ。
近くにいる、すべてのひとに対して。
私の踊りに接してくれるひとに対して。
はなしをしてくれるひと、時々思い出してくれるひとに対して。
笑いかけてくれるひとに。


毎日微妙に変化があって、だけどもっとわはは、ばりばり。みたいな劇的な変身をとげたいなあ、あと何日あるんだろう。と考えながら、そして考えないながら、動いた。
喉がからからになってどうしても水を飲みたくなるまでが1ラウンドとして、それを4本やる。
二度と同じ動きはできないのになんだか破れない、喫水線。
やたらと動いてみる。
あ、と衝動が襲ったことに、あたまの方があとから気づく。
その時にその遅れた反応にずれや隙間を生じさせてはいけない。
ひとつながりで。
ひとふでがきで。

まったく2秒先など考えない。
動いた先から捨ててゆく。
印象や、からだや空間に残った重力だけを餌に、もういちど拾い上げる。
おどりがたくさんのことを教えてくれたのは、私がその刹那でしか生きられないからだ。
次々押し寄せることが不思議で持っておけない。忘れっぽいことの言い訳かもしれない、とどまれないことの。
からだがなくなったら踊ることはできなくて、わたしが残せるものはないんだと考えると昔は切なかった。
切ないと刹那は語源に関係があったりするのかな。
でも今はそうじゃない。写真を撮るのが好きになったから、というのは小さな理由で、いつも鮮やかに丁寧に塗ればいいのだ、それははもうどんなに深めても充分ということはなくて、そのことがどんなにわたしにとって素晴らしく尊く楽しい、生まれ変わりのれんぞくかということがわかったから。
何も持たないで飛び込むのだ。
抜け殻は、ただ時間になるのだ。
少しの記憶と。

そういう瞬間のはなしをよく、共演の良太くんとする。
わたしよりもずっと現在のことに毛穴を開いている彼だから、わたしも負けてはいられない。
…というようなところで踊るわけではないけれど。


今週の日曜日。
たくさんの方に、一緒に時間を過ごしていただけたら嬉しいとおもう。
チケットまだあります。
いまからでもぜひ。

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「None but mind」
8月19日(日) 第一回:15:00〜 第二回:19:00〜
出演:朝弘佳央理(踊り)http://kaoriasahiro.com/    森山良太(ギター)http://ryotamoriyama.com/ 会場:KID AILACK ART HALL http://www.kidailack.co.jp/    〒156-0043 東京都世田谷区松原2-43-11
   TEL. 03-3322-5564 / FAX. 03-3322-5676
   (京王線明大前駅より徒歩二分)
料金:一般2,500円/学生1,500円

チケットは info@kaoriasahiro.com か、コンタクトまでご予約ください。

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ひふ 足の鼓動 揺れて、吠える
声は振り返る
はばたき 削られて、また運ぶ
ひかりに耳を澄ます
どこからか、いつから漂うのかを思った時から
剥ぐ 隙間 のぞみはぶつかる
淵はうたい、ふたつの腕で漕ぎ出す

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ぜひ、お時間あればいらしてください。