* ゴットランド2日目、ラウクとSanna/3.feb.

03/28/2009


とても久しぶりに、2007年のヨーロッパの旅のことを。
大好きなゴットランドにむりくり行った時の。
(Click!) のつづきです。)

高熱を抱えて町を歩き回っていたらSannaから電話。
本当は初日に連絡をくれるはずだったのに、やっぱりFeliciaが風邪をひいてしまって手を離せなかったみたい。
明日はおばあちゃんに預けるから大丈夫、奇岩のあるところまで連れて行っていってあげる、と言う。8時にホテルに迎えに行くね!って、早!!

次の日、元気になったのでホテルの朝食を食べることに。
この旅ではずっとそうだったんだけど、やっぱり勇気がなくて…というか落ち着かなくてちゃんとした食べ物屋さんに入らず、朝ホテルでサンドイッチを作ってそれで一日過ごすことが多かった。途中ちょっとチョコレートを買ったりして。
でもゴットランドはシーズンオフだし、そんなに観光地でもないし、ちょっとした飲み物とかお菓子が買えなくて(あったと思うんだけど私が淋しい景色ばかりめぐっていたから見つけられなかったのだろう)、それに熱があったからおなかがすいていた。
果物をたくさん食べていたらSannaがホテルに入ってきた。
なんだかほっとする。

私はゴットランド島に足をつけられるだけでもう満足だったんだけど、せっかくここに来たんだからこの島で観光らしきことをしようと思って調べておいたものが、奇岩(ラウク)だった。
岩の石灰層を海水が数千年にわたって侵蝕してできたもの。
町を抜けて何もない淋しい場所にいけるし一石二鳥。

Sannaは急いでいたらしくて泥道を猛スピードでぶっとばす。
日本と違ってヨーロッパの車はあくまでも移動のためにあるんだなあ、と思う。
泥をかぶろうが、ちょっとどこかがへこもうが、あまり気にしない。
でこぼこ泥道を走る車に乗っているとロデオをしているみたいで、だんだん楽しくなってくる。
Sannaも最初に逢った印象よりもずっと…というか底抜けに明るいひとで、ずっと笑っている。
景色はどんどん霧っぽく、土は黒く、淋しくなってくるのに、楽しい車の旅だった。

これがRauk(ラウク)。
霧のなかに点在していて幻想的。


車で笑いながらも、ほんとうにゴットランドに来たんだ…タルコフスキーもここを見たんだ…とずっと思っていた。
湿っぽい匂いも、土のにおいも、枯れた木の影も、なにもかも。

私の中学校1年生1学期並みの英語力と、Sannaのスウェーデン訛りの英語が合わさって、私たちはほとんど言葉での意思疎通ができなかった気がする。
どうして彼女がこんなに車をぶっとばしているのか全然わからなかったし、そして帰り道に寄った1軒の家のことも私はFeliciaとおばあちゃんが待つ家だと思った。
そうしたら友人のおうちだった。

このおうちがもう、ものすごい素敵だった。
もっとたくさん写真を撮りたかったけれどさすがにプライベートだからと遠慮。
でも映画に出てくるおうちのように美しくて、親密で、家主のおくさんのこころがあらわれているようだった。
おくさんはもう大きくなっていなくなったお子さんのお部屋からご自分の寝室まで案内してくれた。
あちこちに家族のあらゆる時代の写真が飾ってあって、若いときのおくさんは女優さんみたいに綺麗だった。

食卓で私にパンを出してくれて、二人はバナナをつぶしたみたいなものをスプーンで食べていた。なんだろ、あれ?
どうして私にはパンなんだろ。
よくわからなかったけど。

写真は、そこのおうちの犬と遊ぶSanna。
すごく大きくて最初恐かった。
もう1頭も大きくて歯も鋭くて恐かったけど優しくて内気だった。


まだ朝の10時くらいだったのにSannaは急に、私はこれからFeliciaをおばあちゃんのうちに連れて行かなきゃいけないから、と言った。
もうおばあちゃんに預けたって言ったと思ってたのに。
だから急いでいたんだね。
Feliciaが起き出さないうちに抜け出して私を案内してくれていたみたい。
そりゃ車も飛ばすわ。
ありがとう、と抱きしめる。
するとFeliciaのちいさな写真を渡してくれて、今日会えなかったから、と渡してくれた。
その後ろに住所と、名前。

かつて書いたのだけれど私は彼女の名前をずっとカリンだと思ってきた。
その住所と名前を見るまで。
なぜかというと、初対面のときに…

……(ここからは私のつたない英語が二人の会話を翻訳いたします)…
「私はカオリといいます」
「カオリ!カリンと似ているね。私はイタリアから来たの。実家に帰るところ。」
「カリン?カリンっていうの?あなたが?」
「そう。イタリアの名前よ。フェリシアと一緒にイタリアから帰ってきたの」
「ふたりきりで?」
「だんなさんはいないのよ」
「そうなんだ。…ふたりは名前が似ているね!」
「…イタリアの名前だけどね」

………
(詳しくはこのときの日記で→ (Click!) )

私はこの後彼女のことを何回かカリンと呼んだのに、別に彼女は訂正もせず。
でも実際は、この会話はすごくすれ違っていて、彼女はただイタリアにもカリンっていう名前があってあなたの名前と似ているねと言いたかっただけだったみたい。
「名前が似てるね、私たち」
と言ったときのちょっと不思議そうな顔がフラッシュバックした。
イタリアから帰ってきたというのも、私はイタリアにずっと住んでいて、だんなさんが何かでいなくなって、だからゴットランドに帰ることにしたんだ、と勝手にストーリーを作っていた。
でも実際はイタリアには旅行に行ってただけみたい。
でもさ、乳母車に小さな娘を乗せて、二人きりでイタリアに旅行に行くって思わないよね?
だってニネスハムンから島へのフェリーに乗るにも、かなりてこずっていたんだもの。
それに島で職を探さなきゃとか言ってたし…。
フェリーを待っている間もスパゲッティを食べたし、イタリアに長く住んだひとだと思った。
どうりでイタリアの話をしたりちょっと知っているイタリア語をしゃべったりしても無反応だったわけだ。

彼女はSannaだし、ゴットランドに住んでいてイタリアには旅に行っただけ。
その帰りに私と会っただけ。

それをいっぺんに理解して、でもその誤解のことを伝えるだけの語学力もなくて私はひとりで苦笑いした。
これほど英語ができないのに私よく帰ってこれたなあ。